Weaving Mountain, Coloring Snow
2019年11月16日から24日まで、タクミクラフト初となる東京での主催展示「山の織 雪の色」展を開催いたしました。会場となったIN Galleryへご来場いただきました皆さま、誠にありがとうございました。連日さまざまな出会いが生まれた7日間の展示期間(会期中18・19日休廊)を振り返り、会場の雰囲気をお届けいたします。
展示設営 高機の組み立て
今回展示の象徴的な存在でもあった高機は、日頃、塩沢織物の産地で使用されているもの。メイン作家のお一人である伝統工芸士 桑原博さんが、自らの車で運び込んでくださいました。塩沢から到着した高機は運搬のため解体されていたため、会場に到着してから組み立てられました。新潟各地の学校などで子どもたちに高機での実演・製織体験を指導している桑原さんも、ここまで細かく解体して運んだのは初めてとのこと。特別な電動工具も使わずに、手だけであれよあれよと機が組み上げられていく様は、すでに素晴らしいショータイムでした。最後に、糸の複雑な設置が済めば準備完了です。
東京・自由が丘 IN Gallery
今回の会場は、東京は自由が丘の閑静な住宅街で2003年に開廊した IN Gallery。写真、絵画、器、木彫、ジュエリーなど、アート、工芸分野の作家を中心に紹介しています。かつて、著名な映画監督 ジョナス・メカス氏写真展を開催したことも。多くのアートファンを抱える、知る人ぞ知る隠れ家的なアートギャラリーです。
展示風景
ギャラリーの中心に置かれた高機を取り囲むのは、桑原さんが手がけた重要文化財 越後上布や塩沢織物の貴重な反物の数々。天井には小千谷織物のシェードが川のように流れ、彩りを添えています。
もう一人のメイン作家 羽越しな布のつくり手 大滝ジュンコさんの新作。しな布の良さを生かした、クールなバゲットバッグが並びます。
開場準備の和やかなひととき。同じ古代布の継承者どうし、桑原さんと大滝さんは最初から意気投合。今回の展示で初めてご一緒されたとは思えないほど。
大滝さんの背後に見えるのは、彼女が考案した複雑な織が美しい羽越しな布の反物です。反物がかかっているのは丸めたシナの木の皮。こちらも産地 山熊田から、遠路はるばる東京へやってきました。
こちらは新潟の伝統織物によるテーブルランナーやタペストリー。越後上布の原料である苧麻を編み込んだ苧麻バッグ。羽越しな布の糸を使って作られたマクラメ編みのブローチ。新潟の織物ゆかりの小物もバリエーション豊かに展示されました。
これらタクミクラフト企画のテーブルランナー、piquant(ピクァント)さんの苧麻バッグ、中野三奈子さんのマクラメ編みのブローチは、タクミクラフトショップで継続してご紹介が決定しました!すべてが一点物の作品ばかりです。気になった方はぜひお早めにこちらから覗いてみてください。
タクミクラフト 新潟の織物インテリア
piquant 苧麻バッグ
中野三奈子 macramé マクラメ編みアクセサリー
オープニング
ギャラリー内のイベント会場に移り、出席作家の皆さんが展示会開催の挨拶を行いました。
初日に在廊してくださった作家の皆さん。塩沢織物 桑原博さん、羽越しな布 大滝ジュンコさんをはじめ、新潟仏壇 蒔絵師の羽賀富美子さん(左)も新潟から駆けつけてくださいました。羽賀さんは、ご夫婦で手がけるコイオキ(色漆錦鯉の箸置き)の作者であり、タクミクラフトスタッフが企画するネコオキとトリオキの蒔絵を描いてくださっています。東京からは、苧麻バッグの作者piquantさんがスピーチに立ちました。
11月17日(日)第1回トークイベント
定員いっぱい、満員御礼の会場でスタートした桑原さん、大滝さんによるトーク。産地の風景や工程をスライドで見せながら、ここでしか聞けない興味深いお話が続きます。
トーク後は、ギャラリーに戻り桑原さんによる高機の実演を鑑賞。軽快に機を織りながら様々なお話を聞かせていただきました。
イベント参加者に配布した展示会カタログ。左から山の織=山熊田の羽越しな布、右から雪の色=塩沢の越後上布をご紹介しています。
タクミクラフトショップでも少数ですがこのカタログを販売いたします。お求めの場合はこちらからどうぞ。
また、新潟の織物ゆかりの作品、テーブルランナー/苧麻バッグ/しな糸のフクロウをお買い上げの方には、当冊子を1冊お付けします。
お客様と作家、作品たち
会期中、約200名の方にご来場いただきました。新潟の織物、工芸品を初めて知ったという方も多く、また、なによりも作家本人との触れ合いに魅力を感じていただいた方がとても多かったことは、主催者にとっても大変うれしいことでした。
11月24日(日)第2回トークイベント
最終日に開催した2度目のトークイベントも満員御礼。皆さん大変熱心に聞きいってらっしゃいました。
大滝さんの羽越しな布の名古屋帯や新作バゲットバッグを、実際に手にとってみながら楽しい会話が続きます。
この日も高機と桑原さんの周りには多くの人々が。プロもドキリとするような鋭い質問なども飛び交い、ギャラリーはいつになく熱気に包まれていました。
普段間近で見ることが叶わない越後上布をはじめ、伝統的工芸品 塩沢紬、本塩沢の名品がずらり。変わり亀甲に見惚れる塩沢紬。精緻な柄が見応えある本塩沢。
熱心に高機を覗き込む女の子。若い世代のみなさんにも、日本の大切な文化の一端を知っていただくことができました。
展示作品
piquantさん 苧麻バッグとともに。お天気の良い日はギャラリーの中庭も展示会場に早変わり。
来訪者の皆さん、それぞれお気に入りの一品を見つけ、手に持って楽しんでくださっています。
苧麻からの手仕事、雪国の風情あふれる越後上布のテーブルランナー。足立茂久商店 寺泊山田の曲物作品。限定の重ね弁当箱や、電子レンジで使えるわっぱセイロ。〈8/10 はちがつ-とおか〉シリーズから届いた十日町市池谷・入山集落の魚沼産コシヒカリ新米と加茂桐米びつ。
こちらを見上げるお顔がなんとも愛くるしい、桑原さんの干支木目込人形。本塩沢と塩沢紬がふんだんに使用されています。仏壇工芸士とクリエイターによる〈ネコオキ〉漆のはし置きシリーズ。羽賀富美子さんと造形作家 さいとうようこさんによる〈トリオキ〉はとても人気でした。
羽賀佛壇店 全国的にも知られるようになった色漆錦鯉のはし置き〈コイオキ〉。本漆が贅沢に塗り重ねられた鯉のシンプルなフォルムと、美しく微細な蒔絵の和柄紋様が匠の粋を感じさせてくれます。
マクラメ編み作家 中野さんによる、特注のフクロウ・カメレオンシリーズと、しな糸とスワロフスキー、村上木彫堆朱を編み込んだチャーム。しな糸のチャームはイヤリング、ピアスにおすすめ。堆朱のチャームは和装にもあいそうですね。どちらも日頃の装いのアクセントにぴったりです。
鈴木石太郎タンス店 加茂桐簞笥職人が手がける桐エコスピーカー。北限のお茶処として有名な村上の紅茶や新潟を紹介する冊子。タクミクラフト限定 足立茂久商店+ISANA 曲輪スツール。
ご来場、誠にありがとうございました。また次回、お目にかかれることを楽しみにしています。
photo: mika nakanishi + タクミクラフト、来場者の皆様より
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山の織 雪の色
Weaving Mountain, Coloring Snow
会期:2019年11月16日 SAT 〜24日 SUN 12:00~19:00(最終日17:00閉場)18・19日休廊
主催:タクミクラフト
共催:IN Gallery
参加作家(敬称略):
羽越しな布 大滝ジュンコ(村上市山熊田)
越後上布・塩沢織物 桑原博(南魚沼市塩沢)
苧麻バッグ piquant(東京都)
マクラメ編 中野三奈子(新潟市)
塩沢織物、小千谷織物、十日町織物
新潟の工芸職人、作家による作品
漆 羽賀良介・羽賀富美子(新潟仏壇 塗師・蒔絵師)
陶 さいとうようこ(造形作家)
桐 鈴木浩昭(加茂桐簞笥)
曲物 足立照久(寺泊山田の曲物) など